ライブコマース(英語:Live Commerce)とは、デジタルプラットフォーム上でライブ動画配信サービスなどを利用し、ライブ配信で商品を紹介する配信者と視聴者で双方向に連絡を取り合い商品を確認して販売する手法である[1][2]。ライブストリーム・ショッピング(Livestream shopping)、ライブビデオ・ショッピング(live video shopping)とも呼ばれ、多くの場合、インフルエンサー協力の下に行われる。Liveとe-commerceを掛け合わせたかばん語。
テレビショッピングと類似した販売手法となるが、消費者がライブストリーム中にチャットを通じ質問をしたり、商品を購入したりすることができ、没入感のあるインタラクティブな体験を提供することが目的となり[2]、購入率は通常のECサイトに比べ高い傾向にある[3]。2017年にアジア地域で始まり、その後数年わたり世界各地に拡大した[4]。
歴史
편집2016年から17年にかけて、アメリカのAmazonとウォルマートがライブコマースを行ったが打ち切っている。しかし、2019年2月に再びAmazonはアマゾン・ライブ(Amazon Live)を提供した[1]。
2018年3月から動画配信サイト運営サービスのTikTokは、電子商店街の淘宝網と提携し、商品の販売に繋げられる機能を提供した。2021年8月24日には、オンラインショップの出店支援サービスShopifyも提携することを明らかにした[5]。
2018年11月15日 Instagramは「ShopNow」サービスを提供した[6]。
2019年、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により世界では外出禁止令が発令されたため、巣ごもり需要(パンデミックブースト)も併せ、ロシアでは急激なデジタル化が進み、中国ではライブコマースの配信数が大幅に増加したことでECサイトの消費活動に大きな影響を与えており、消費者はライブストリームショッピングを重要なインタラクティブエクスペリエンスとして認識している[7]。KPMGとアリババ集団傘下のアリ研究院の共同研究によれば、2021年の中国国内での市場規模は前年比90%増の1兆9,950億元(約33兆9,150億円)を記録し拡大傾向にあり[8]、2022年には前年比60%増となる2兆8,500億元(約55兆2,000億円)になると予測されている[9]。利用者数は3億8,800万人となり、これは、中国インターネット人口の39.2%に相当する[8]。また、主に利用されている動画プラットフォームはタオバオ(68.5%)、TikTok(57.8%)、快手(41.0%)の順となっており、ライブコマースを利用した理由の大半が『価格』に関するものであることが調査から明らかとなっている[8]。
2021年末には、中華人民共和国人力資源社会保障部、国家新聞出版広電総局、틀:仮リンクによってライブコマースが正式な職業として認定されており、国家職業技能基準が制定された[10]。貴州省、青海省、チベット自治区など少数民族地域や農村地域でも利用が広がっており、売り上げを大きく伸ばすことに成功している。チベット自治区では前年比66.2%増の74億2千万元(約1,481億円)の大幅な伸びを記録しており、遊牧民や地方の生活を一変させる程の経済効果をもたらしている[11][12][13]。
2022年、ネバダ州ラスベガスで行われた小売業界のイベント「SHOPTALK」内でも先行する中国の大手ECサイト天猫を始め、化粧品大手のエスティローダー、YouTube、有力ベンチャーキャピタルなどの関係者が登壇したライブコマース講演に多くの関心が寄せられており、アメリカのZ世代を中心に流行の兆しを見せ始めている[14]。経済産業省の報告によれば、世界のEC市場規模は年々増加しており、2021年時点でB2Cのみで558兆円市場と見積もられている[15]。
アジア各地におけるライブコマースの認知度は高く、ライブコマースを通じ商品を購入した割合は上海で49.1%、バンコクで60.6%、ハノイで62.5%と軒並み高く、日本は僅か5.9%であるが、日本国内でも流行の兆しを見せ始めており[16]、日本では大手企業だけでなく、一次産業者による農産物や海産物の産地直送配信や、地方都市では国内だけでなく海外に向けた産業や観光の魅力を発信することで地方創生に繋げる取り組みが開始されている[17][18][19][20][21]。
市場規模
편집市況分析を行っている調査会社틀:Ill2は、中国におけるライブコマースの市場規模を2017年から調査しており、2019年度で433億元、2020年度で961億元としている[22]。2019年からの新型コロナウイルス感染症による外出規制の影響で、ネットショッピング市場規模が拡大したとの指摘もある[23]。
配信事業社
편집配信者
편집デジタルマーケティングは、インフルエンサーマーケティングを含むいくつかのサブカテゴリーによって構成される。これまでは、コンテンツのプロモーションやブランドの認知度向上には芸能人を起用することが定石とされた。インフルエンサーマーケティングでは、ソーシャルメディアの世界から選ばれた専門性の高いセレブリティ(配信者;ライバー)がオピニオンリーダーとなり、消費者の意思決定に直接的または間接的に影響を与えることが可能となる[24]。消費者はインフルエンサーの宣伝するメッセージを従来の広告よりも信頼性が高く説得力があると認識する傾向があるため、企業にとって高い投資利益率(ROI)を確保することに繋がる[25]。
2014年辺りから中国では消費者の購買行動に大きな影響を及ぼすセレブリティを(KOL:Key Opinion Leader[26])と呼んでおり、企業の社長や製品開発に携わる技術者、開発された製品を使用するプロなど、その分野に精通し、高度な知識や技術による高い訴求力と信頼性を有していることが一般的なインフルエンサーとの大きな違いとなる[26][27]。中国の新疆ウイグル自治区、昭蘇県の副県長を務めていた賀嬌龍が発信する動画は累計5億2千万回の再生回数を記録しており、フォロワーは500万人を超え、地元の農産物を紹介する動画が人気となっており、一回の発信で100万元(約1,800万円)を売り上げる[28]。
このほかに(KOC:Key Opinion Consumer)があり、これは利用者目線の商品レビューに影響力のある人物を指し、KOLに比べ訴求力は落ちるものの、商品やサービスを利用者に広くわかりやすく宣伝する目的には向いているため、企業では目的に応じ使い分けている[26]。これに付随して中国国内ではKOLビジネスも拡大しており、KOLを専門に養成する専門学校が設立されており、上場企業に名を連ねるKOL関連企業なども登場している[29]。
新たな職種とフレキシブルワーカーなどの雇用形態を生み出し、中国経済の原動力となるまでに成長したデジタル経済(ライブコマース)ではあるが、これに伴いデジタル人材が1,100万人不足しており、この先も継続的に不足するであろうとの報告が行われている[30]。
利点と欠点
편집ライブコマースの利点と欠点には以下の様なものがある[3][8][27][31][32][33]。
- 利点
- 納入先との直接取引や販売数が見込めるため値引率が高く視聴者は市場よりも安価で購入できる。
- 文字情報だけのECサイトよりも動画は5,000倍高いとされる効果により多くの売り上げが見込める。
- 新たな客層が獲得できる。
- 配信者、視聴者共に場所を選ばない。
- 商品の魅力を的確に伝えられる。
- 写真やテキストだけはわからない商品の感想や使用感、商品への質疑応答など商品に対する不安感の払拭。
- 各種配信プラットフォームは基本無料であり、テレビやCMなど既存の広告媒体に比べ費用が掛からない。
- 知識や技術を有するKOLによる高い訴求力と信頼性。
- ショップ店員など個人や人柄に対しファンが付く。
- リアルタイム配信のため視聴者同士がその体験を共有できる。
- 受けたコメントをキャンペーンや商品開発に生かせる。
- 欠点
- 配信トラブルによる機会損失。
- 不十分な事前告知での視聴者不足。
- 配信品質や配信時間による視聴者の増減。
- 配信者の態度や言動による信頼性やブランドイメージの失墜。
- 人気となるにはある程度の撮影環境が必要となるため商品単価が低い場合、費用対効果が悪化する。
- 中国の消費者に向けた配信する場合、法律、金融、医学、教育など特定のカテゴリーには専門の資格が必要。
- 人気配信者の出演料の高騰。
- 配信者側から出品企業側への過度な値下げ圧力。
著名なインフルエンサー(KOL)
편집出典
편집- ↑ 가 나 中国に続け 動画通販「ライブコマース」新興4社 出版者:日本経済新聞 更新日;2019年12月16日
- ↑ 가 나 “A Comprehensive Guide to Live Stream Shopping”. 《Influencer Marketing Hub》 (미국 영어). 2020년 11월 19일. 2021년 3월 3일에 확인함.
- ↑ 가 나 “ライブコマースとは?概要や注目される理由、取り入れるメリットと注意点”. ECのミカタ. 2022년 2월 16일. 2022년 4월 20일에 확인함.
- ↑ Henkel. “Shopstreaming: When live streaming meets shopping”. 《www.henkel.com》 (영어). 2021년 3월 3일에 확인함.
- ↑ TikTok、商品購入機能導入へ 加ショッピファイと提携 出版者:ロイター 更新日:2021/8/25 参照日:2021/9/16
- ↑ Instagram、フィードにおける動画投稿の対応など、ショッピング機能のアップデートを発表 出版者:Facebook 更新日:2018年11月16日 参照日:2021/9/16
- ↑ “Shopping in live streams”. 《South China Morning Post》 (영어). 2020년 4월 3일. 2021년 3월 3일에 확인함.
- ↑ 가 나 다 라 “ライブコマース、健全な発展を見据えて(中国)”. 独立行政法人日本貿易振興機構. 2021년 7월 27일. 2022년 5월 7일에 확인함.
- ↑ “中国では売上高30兆円を超える販売手法、「ライブコマース」とは”. 日経クロステック. 2022년 5월 9일. 2022년 5월 10일에 확인함.
- ↑ “ライブコマースが正式な職業に 国家技能基準を発表”. 人民網. 2021년 12월 2일. 2022년 6월 13일에 확인함.
- ↑ “チベット自治区1-6月のネット小売額が66.2%増の1260億円超”. 人民網. 2021년 7월 22일. 2022년 6월 13일에 확인함.
- ↑ “ライブコマースが貴州産茶の販売を後押し”. 人民網. 2020년 5월 1일. 2022년 6월 13일에 확인함.
- ↑ “青海省牧畜民の生活改善を支えるライブコマース”. 人民網. 2021년 1월 6일. 2022년 6월 13일에 확인함.
- ↑ “Z世代も熱視線、中国に続き米国もライブコマースがブームの兆し”. 日経XTREND. 2022년 4월 25일. 2022년 5월 5일에 확인함.
- ↑ “令和2年度 電子商取引に関する市場調査” (PDF). 経済産業省. 2021년 7월. 2022년 5월 19일에 확인함.
- ↑ “動画で会話しネット販売 地方で拡大 ライブコマース、漁港・直売所の臨場感”. ITmedia. 2022년 5월 9일. 2022년 5월 10일에 확인함.
- ↑ “産地直送!ライブコマースに挑戦する生産者たち【SDGs】”. テレビ朝日. 2022년 4월 12일. 2022년 5월 5일에 확인함.
- ↑ “漁師が漁業のリアルを伝える「船上ライブコマース」を開始 デジタル活用で、消費者参加型の「疑似せり体験」や、鮮度のよい魚介類の直送を実現”. PR TIMES. 2022년 4월 14일. 2022년 5월 5일에 확인함.
- ↑ “「売り方のDX」で稼ぐ地域を創出 地方創生×ライブコマース”. 事業構想. 2022년 2월. 2022년 5월 5일에 확인함.
- ↑ “関係人口の力で魅力発信!長崎・雲仙温泉「有明ホテル」のユニークな挑戦〈地域特産トレンドナビ〉”. Tokyo Headline. 2022년 4월 7일. 2022년 5월 5일에 확인함.
- ↑ “ライブ動画で販路拡大 田辺市の鮮魚店で実験”. AGARA 紀伊民放. 2022년 4월 22일. 2022년 5월 5일에 확인함.
- ↑ “China: market size of live commerce 2017-2020”. 《Statista》 (영어). 2021년 9월 16일에 확인함.
- ↑ 統計Today No.162 新型コロナウイルス感染症で変わるネットショッピング 総務省
- ↑ Zak, Stefan; Hasprova, Maria (2020). “The role of influencers in the consumer decision-making process”. 《SHS Web of Conferences》 (영어) 74: 03014. doi:10.1051/shsconf/20207403014. ISSN 2261-2424.
- ↑ Bognar, Z. B., Puljic, N. P., & Kadezabek, D. (2019, June 13). IMPACT OF INFLUENCER MARKETING ON CONSUMER BEHAVIOUR. 42nd International Scientific Conference on Economic and Social Development, 308
- ↑ 가 나 다 “KOLの基礎知識”. Dejima. 2022년 2월 17일. 2022년 4월 20일에 확인함. 다음 글자 무시됨: ‘ KOLマーケティングとは?/ KOLとインフルエンサーの違い / 中華圏で「口コミ」が重要な理由…ほか’ (도움말)
- ↑ 가 나 “中国ライブコマース市場の光と影:実態はバラ色ではない”. DIGIDAY. 2021년 2월 8일. 2022년 4월 21일에 확인함.
- ↑ “新疆の雪原を馬で疾走した赤マントの女性副県長がライブコマース担当に 売上1億元突破”. 人民網. 2022년 1월 10일. 2022년 6월 13일에 확인함.
- ↑ “トップKOLのリンピンさんに聞く!中国インフルエンサーマーケティング”. ウェブ電通報. 2022년 4월 25일. 2022년 5월 7일에 확인함.
- ↑ “中国デジタル人材1100万人不足 雇用の可能性を開くデジタル経済”. 人民網. 2021년 11월 22일. 2022년 6월 13일에 확인함.
- ↑ “【2022年】更に加速するライブコマースとは?市場動向や事例、アプリを徹底解説”. GMO. 2022년 4월 21일에 확인함.
- ↑ “「ライブコマース」とは?意味やメリット、注意点を解説|5分でわかるEC用語”. ARTTRADING. 2020년 12월 8일. 2022년 4월 21일에 확인함.
- ↑ “トヨタ車をライブコマースで宣伝の試み 車のサブスク「KINTO」”. FNNプライムオンライン. 2022년 7월 2일. 2022년 7월 2일에 확인함.
- ↑ <中国青年の日・先端を走る若者>ライブコマース配信者の薇婭さんと李佳琦さん 出版社:人民中国
- ↑ “「たった1人でフジテレビ以上」中国最強のインフルエンサー女王のヤバすぎる"売る力"”. PRESIDENTオンライン. 2021년 11월 22일. 2022년 5월 10일에 확인함.
- ↑ “中国ライブコマースの女王「薇婭(viya)」:あらゆる物がライブ配信で売れる”. 36KrJapan. 2022년 4월 8일. 2022년 5월 10일에 확인함.
- ↑ viya 出版社:タイム 更新日;2021年9月15日
- ↑ “「ライブコマース」代表的存在に罰金238億円。脱税指摘、「富裕層叩き」相次ぐ中国で”. HUFFPOST. 2021년 12월 20일. 2022년 5월 10일에 확인함.
- ↑ “<独占インタビュー>3時間の売り上げ10億円超!Aちゃんが「口紅王子」李佳琦に聞く”. 中国国際放送局. 2021년 11월 9일. 2022년 5월 10일에 확인함.
- ↑ “【記事コラム】中国トップインフルエンサー・男性美容家KOLの“李佳琦(Austin)”通称 『口紅王子』の人気の秘訣とは?”. bolome. 2019년 7월 3일. 2022년 5월 10일에 확인함.
関連項目
편집外部リンク
편집- ライブコマース - コトバンク
- 令和2年度 電子商取引に関する市場調査(PDF) - 経済産業省
- ライブコマース - 独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)
- ライブコマースの動向整理(PDF) - 三菱UFJリサーチ&コンサルティング
- 調査レポート R&A「日本におけるライブコマースの現状」 - KDDI総合研究所